第六章

「光と闇」



夢を見た気がする。


私が私ではなくなっていくような。

そんな夢。

見たこともない異次元空間に立っていた私。

けれどそんな空間の事など忘れてしまい私は目を覚ました。

私の目の前にいたのはお父様でここはミネルヴァ基地の医療室だった。

「・・・・・お父様。」

「茶倉!!」

「!?」

私はお父様の腕の中でぎゅっと抱きしめられていた。

そして私は気がついたのだ。

部屋にあるカレンダーを見ると私は6日も寝たきりになっていたらしい。

お父様はお母様が植物状態になっている身のため、私がそうならないかと心配だったのだ。

私は泣いているお父様を腕の中に抱いた。

「私なら大丈夫です。ご心配をおかけしました。」

「すまない。私は修羅にはなりきれていない。これから世の中をひとつにまとめていくのなら私は本来修羅であるべきなんだ。」

「・・・・でもそれがあなたのいいところです。そんなあなただからこそ私たちは剣をとり、民衆がついてくるのです。どうかその事をお忘れないように。お父さん?」

そんな私の言葉に泣き崩れるお父様なのだった。


その時、クレアはリヒトの元で尋問をうけていた。

「質問だ。お前たちの正体はなんだ。」

「・・・直球だな。それについて答える気はない。」

縛られながらもリヒトをにらみつけるクレア。

しかしリヒトも負けていない。

鋭い目がクレアを睨みつけていた。

と、突然扉が開いた。

部屋に入ってきたのは銀髪で背の高いゴーグルをかけた男。

「おまえがクレア将軍か。」

「・・・・・そういうお前は?」

「私の名はキラーだ。リヒトでは尋問があまいと思ったのでな。」

「くっ!!」

「では、始めよう。貴様らの正体は人間の闇に降りてきた悪魔だな?」

その言葉を聞いてクレアがピクリと動いた。

そして顔をそらす。

「・・・・・・なんの事だ?」

「ほう。では貴様らの指揮をしているのは元地球連合共和国大統領のセムだな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「そしてそのセムについているのはギルバルヴァ。人の闇が生み出したというニャルラトホテプと同様。人類の闇が生み出した破壊の魔王。」

「・・・一体どこからそんなことまで。」

横で聞いていたリヒトがなるほどと頷く。

それなら報告で聞いていた茶倉の暴走も説明がつく。

人間としてありえない行動。

コインには表と裏があるように光にも闇がある。

その闇が火星人というわけだ。

もはや人知を超えている。

そして隣にいるこのキラーも多分「悪魔付き」なのだろう。

「私を退けたとしてもお前たちの負けは確定だ。自らの闇に食い殺されればいい。」

クレアが負け惜しみを言うかのように言葉を発してキラーを睨み付ける。

だがキラーも黙っていなかった。

「・・・我が名はニャルラトホテプ。ギルバルヴァ同様の存在だ。」

「なっ!!」

「だが今の人間は試してみる価値がある。我らが盟主まで先刻降りてきた。残りの者が来るのも時間の問題だ。」

「・・・・・この世界でもやはり貴様らは邪魔をする気か!!」

「当然だ。」

キラーは部屋から立ち去っていった。

残されたリヒトにクレアが語り始めた。

「人々は滅びによってしか救われない。ここで我々を退けたとしても人間は人を殺し、恨み、妬み。そして業に包まれていく。また同じ事を繰り返すだけだ。なぜそれが人間も奴らもわからないのだ。」

ある程度の事情を知ったリヒトがクレアの拘束を解いてやる。

「・・・なんのつもりだ?」

「人というものはそれほど馬鹿ではないものだ。失敗の結果として学習していく。その過程をみてみないか?」

「・・・そんな権利は私にはない。」

「いや。人が生み出した闇だからこそ君にしか出来ないことがある。」

「それをやれと?」

「そういう事だ。」

クレアは自分が必要とされている事に気づく。

これは完全に我が国に対しての裏切りでしかないこともわかっている。

だが、それが可能かもしれないという可能性がある事もわかっていた。

だから返事ができたのかもしれない。

「よかろう。」

と。



続く