第三章

『決意』


気分がノラない。

そんな朝だった。

だが私はミネルヴァの軍師。

とりあえず着替えを済ませて趣味であるピアノを弾くことにした。

曲は「ピアノ協奏曲第一番蠍火」。

だがこの曲は協奏曲なので人がひけるようにアレンジをして弾いている。

ピアノは大好きだ。

いつでも弾くことができるし心を癒すこともできる。

私の母がいつも弾いていた。

母と話す事は今はもうない。

いや、正確にはもうできないと言うべきであろうか。

死んだわけではない。

ミネルヴァが結成される前に地球は戦火に包まれた。

その時に母は私をかばって撃たれた。

私も父も母が死んでしまったのではないのかと心から心配していた。

だが母は生きていた。

植物状態として・・・だがな。

今はミネルヴァの医療施設で寝たきりの生活をすごしている。

その昔の夢を見てしまったせいで気分がノラない。

私は小さかったし何もできなかった。

だが私が打たれていればお父様にあんな悲しい顔をさせずに済んだかもしれない。

しかし、私が死んでいたら御父様は・・・・・・・。

結局どうすることもできなかった自分が悔しい。

いつの間にかテンポも崩れ強弱さえもとれなくなっていた。

その時だった。

「心に乱れが生じているな。茶倉にしてはらしくない演奏だ。」

「御父様!!」

いつの間にか御父様が私の部屋に入っていた。

最初はびっくりしたが私は先の演奏を思い出して思わず赤面する。

「・・・ノックはしてください。お父様。」

「・・・したのだがな?ピアノの音がしているのに返事がなかったから入った。」

「そうでしたか。申し訳ありません。」

「いや、いいんだ。それよりどうした?」

なぜか御父様には私の考えだけは伝わってしまうらしい。

戦闘の時は私の方が上手だというのに。

私は御父様にだけは隠し事をしたくなかった。

「・・・地球が戦火に包まれた時の夢をみていました。」

「!!」

今まで聞いたことがないようなそんな声を父上が発した。

いや、過去に一度だけある。

お母様が撃たれた時に。

「す、すみません。」

御父様は顔を真っ青にして冷や汗をかいていた。

やはりあの時を思い出してしまい辛いのだろう。

私は知っていた。

いつもお母様がいる部屋にいって毎晩のように泣いている御父様を。

だからそれをみている私も辛かった。

「いや、いいんだ。」

御父様はムリに作り笑顔で私に微笑んだ後で椅子に座った。

そしてこう続けた。

「今日も麗は泣いていた。夢の中でなにか辛いものでも見ているのかもしれない。」

お母様はいつも涙を流していた。

植物状態だというのにだ。

たまに私の名前を呼んでいることもあるらしい。

「笑顔を向けてくれる麗がいない日常はやはり辛いものがある。それは思ってしまうんだ。だが、私の大切な娘は生きている。麗だって死んだわけではないんだ。目はさめないけど息はしている。だから・・・・・・。」

「え!?」

ふと御父様の顔をみた時に気が付いた。

御父様が泣いている。

私は御父様を思いっきり抱きしめた。

そしてこう言ってやった。

「お母様は必ず目を覚まします!!私だってちゃんとここにいます!!だから・・・・・・。泣かないでお父さん!!」

泣かないようにしようと決めていたのに。

なのに・・・どうして?

私は御父様を抱いたまま泣き出してしまった。

涙が止まらなかったんだ。

御父様は私を抱きしめたままこう言った。

「私は二度とこんな思いをしないで済む世界をつくるためにミネルヴァを立ち上げたのだ。その世界を火星人が壊すというのなら・・・・・・。私は総指揮官として修羅となる!!」

「・・・・・・御父様。私も同じ気持ちです。」

私たちはお互いの気持ちをぶつけあった。

ナイアは私と父の中は異常だというけれど。

でも私はそんな自分や私を大切にしてくれる御父様が好きだ。

突然御父様の携帯電話がなった。

「私だ。」

『地球からの伝言です。セム総理大臣が何者かに憑依され地球で暴れまわっているようです。』

「なんだと!!・・・・・・わかった。私が地球に向かう。」

御父様は電話を切ると私にこう告げた。

「すまない茶倉。これから地球に行ってくる。」

私たちは知らなかった。

これから起こる最悪の事態を。





続く!!