第二章

『反逆と契約』


地球に残された国々は地球連合共和国としてひとつの国となっていた。

彼らは行く場所がなくて残ったわけではない。

生まれ育った祖国を捨てられないために残ったのだった。

すなわち地球がこのまま何もなければ別に戦争なんてどうでもいい話だった。

しかし、ミネルヴァから聞かされた衝撃の事実。

火星には火星人が存在し、人類に憑依している。

当然ながら地球側は「火星人の存在」を始めはみとめなかったのだ。

しかし、信じるしかないような事件はおこってしまった。


場所は元インド。

突然火星から大きな隕石が降ってきたのである。

連合はすぐにこの場所の調査を特殊部隊に要請した。

そして若いのにできる大統領として国民からも支持を受けているセムが自らその場へと向かったのだった。


「ふん。面倒だ。」

そう愚痴を零しながらヘリを降りるセム。

巨大なクレーターの下に未確認物体は落ちていた。

セムはすぐにそれを確認すると特殊部隊の隊長を呼び寄せた。

「おい。状況は?」

部隊長はざっと敬礼し答えた。

「どうやら火星から落ちてきたことには間違いないようです。ただ・・・・・。」

部隊長はその先をなんと伝えればいいのかと戸惑っていた。

人間の概念としてはありえない現象をどう言えばいいのか。

彼はそんなことをつい考えてしまう。

そんな様子をみても関係ないといわんがばかりに報告を迫る。

「早くしろ。」

「・・・・・・はい。この隕石の中から生物反応があるのです。今も生きています。しかし、火星に行った人間たちがもしも中に入っているのだとしたら落下の高熱に耐えれずに死んでいるはずなのですが。」

「ほう。では、火星人は実在すると?」

「い、いえ。そればかりはなんとも言えませが・・・・・。とにかく今は危険な状態です。」

セムはその報告を受けた後クレーターの下にある不気味なものを鋭い目で見下していた。

「・・・・・・戒。これは確かに報告通りかもしれないな。貴様の言葉をもう少し信じていればよかった。」

戒は私、茶倉の父の事である。

昔父が仕事で海外の研究所へと向かったことがあった。

セムはその時の研究所仲間なのらしい。

つまり、戦争が起こるとしたら地球はミネルヴァ側についてもおかしくはない。

と、突然部隊の兵が大声をあげた。

「全員伏せろっ!!」

その声を聞いた全ての兵がその場に伏せる。

ただしセムは腕で顔を隠して顔を逸らしていた。

セムはすぐに何が起こったのかを確かめるためにクレーターの下を見る。

しばらく待ってやっと煙がなくなった時にみた衝撃の物。

「こ、これは!?」

セムが見た先にあったもの。

なんと隕石が爆発して真っ二つになっていたのである。

その時の爆発で下にいた兵士の全てがもう息を引き取っていた。

「下を確認してくる!!」

「お、お待ちください!!大統領!!」

兵士の言葉を無視してセムは隕石へと向かってクレーターをすべり降りていく。

まずセムは2.3人の兵士の動脈を調べたがやはり手遅れだった。

セムは腰に下げていた剣を引き抜いて隕石へと近づく。

その時だった。

『汝は我が呼びかけに応えしモノなりか?
我が声が聞こえるならば我と契約を果たせ。
契約を果たせば汝が欲するがままの平和を築き上げることが可能であろう。
我が名はギルバルヴァ。』

その声はセム以外の誰にも聞こえていない。

セムは周りを見回した。

しかし声の主はどこにもいない。

『我が姿を探してもどこにもありはしない。
私は汝を捜し求めていた。
王として相応しい器を。
宇宙に。大地の理を授けてくれる存在を。
汝こそ相応しい。
さあ、この光に触れるがいい』

その声が示すとおり、セムの前に光の輪が現れた。

その光をみたセムの心はなぜか落ち着きを見せていた。

その光が導くがままにセムは、

「・・・平和への力か。いいだろう。私は現世の王として君臨する!!」

彼はとうとうその光へと手を触れてしまったのだった。

セムの体が突然怪しい光へと包まれていく。

「大統領!!」

突然の事態に混乱している兵士の言葉などもはや聞こえない。


『良くぞ私に触れた。
さあ、新たな王よ。
進もうではないか。
目に映る全てを破壊せよ。
我こそは全知全能なる神。
今度こそ世界を終わらせるのだ!!』

セムの体を包んでいた光が消え去っていく。

セムは目を閉じてその場に呆然と立っていた。

奇妙な光景ではあったが生き残った全兵士がセムの身を心配しセムの場所へと急ぐ。

「大統領!!無事だったのですね!!」

兵士たちはセムがとりあえず生きていたことに対して喜び、場を歓喜が包み込んだ。

しかし、セムの口から出た言葉はありえないものだった。

「ふん。大統領?何をいっている?私は王だ。この世の全てを司り新たな理を示す新たな創造主なのだ。貴様らに生きる資格などないのだよ。さあ、消えてもらおうか!!」

突然セムの爪がありえない長さと形となり兵士を切り裂いた。

次々と引き裂かれていく兵士たち。

悲鳴をあげたつもりが悲鳴にならずに死んでいく。

誰もが信じられないといった表情で息を引き取っていた。

その場にいた兵士を殺し終わるまでの時間は

30秒。

「さあ、人類に制裁を!!」

セムは甲高く不気味な笑みを零し兵士たちを見下していた。


これが悲劇への始まり。
もしもセムがこの光に触れてさえいなければうっとうしい事態にはならなかっただろう。
しかしもう遅い。


-ミネルヴァ基地-

「あ!!ちょっと茶倉!!」

私は声の方をムリ向いた。

ピンク色の髪が特徴的な女の子。

古くからの友人。

「ナイア。どうしたの?」

ナイアは私の方へと急ぎ足で走ってくる。

彼女の後ろではラディウスを整備班が整備しているという展開。

私はまさかと思った。

「まさかナイア!!ラディウスに乗るっていうの!!」

「何よ今更。総司令官についさっき着任するように言われたの。適正があるとかで。」

私は頭を抱えた。

まさか私以外にもナイアを着任させるとは。

しかし適正があるなら仕方がない。

そもそもがこんな時代なのだから。

「茶倉。あんたもラディウスのパイロットになるんだってね。しかも艦隊の軍師さんだ。頼りにしているよ?」

「そ、そんな!!私は自分をそこまで評価していないのに。その・・・あの・・・・・・。」

「何言っているのよ。大好きなお父様に信頼されている証拠じゃない。私も信じているからさ?あんたの命令ならどんな状態でも従うから。がんばりなよ?」

「・・・・・・うん。」

ふと気が付くと六角クランチをもった男が私とナイアの間に入ってきていた。

オレンジ色で短髪。

私もナイアもよく知っている人だった。

「英利。整備は順調なの?」

ナイアの質問に対して英利はクランチで肩を叩きながら自信満々に答えた。

「俺を誰だと思っているんだよ。機械に関して俺ほどマニアックなやつはいないんだぜ?」

「はいはい。」

「ちょっ!!おまえ信じてないだろ?なぁ茶倉、酷いだろ?俺様は完璧だぜ?」

正直私はこのテンションについていけないためどうでもよかった。

だが、完璧と言う言葉についつい反論してしまっていた自分だった。

「・・・・・ビックパイパーなのだが。プラスマイナスを逆に繋いでいるとさっき副指令が激怒していたが?」

「へ?マジで?」

「すぐに副指令のところへいけ。」

「あははははははは。」

英利は大笑いしながら急ぎ足で副指令のところへと向かった。

笑いでごまかそうとしたのだろうがあまりにも惨めだったことは内緒。

「おっ!茶倉じゃん!」

今度は誰だよと思いながら私は声の方をふり向く。

そこにはミネルヴァ艦隊所属のエレキ、セリカ、孔雀、エリカがいた。

いや、その後ろにはモフィカンの変なやつまでいる。

「今は基地の中だ。指揮官と呼べ。」

一応これも軍の秩序のためのけじめである。

いくら古くからの友達だからといって許される事ではない。

「もう、エレちゃん♪けじめはちゃんとつけないとダメよ?」

「あはははは。仕方ないじゃん?昔からの友達なんだしさ?そういうセリカだって茶倉って呼んでしまわないか?」

「む。私はちゃんとケジメくらいつけられます。」

セリカはエレキに対してぺーと意地悪な顔をする。

孔雀がゴホンと咳払いでその場を制した。

彼はいつも真面目で私も彼にはかなり期待している。

エリカが姿勢を正して敬礼すると全員が揃って敬礼をする。

「ミネルヴァ艦隊。ただいま訓練を終わりました。」

エリカもなかなかしっかりしている。

・・・・・・お父様。絶対第一艦隊と第二艦隊の人選を間違ています。

そんな事を思いながら私も5人に敬礼する。

そう、その五人目がその様子をみて咳払いをした。

「指揮官。俺はコックなんだが?俺も敬礼しないといけなかったのか?」

「ジルチ。あなたは敬礼以前になんでこんなところにいるの?」

「いいことを聞いてくれた。」

ジルチはニヤニヤとしながら足元においてある銀色の箱から中身を取り出した。

中身はラーメンだった。

「これが男のラーメンってやつよ!!ついさっき完成したんだ。司令官、味見してくれないか?」

私はどんぶりをうけとってラーメンを箸でつまんだ。

全員が私の顔をみている。

特にジルチは自信満々に私の顔をみていた。

しかし!!

「まずっ!!」

私は口に含んでいたラーメンをあまりのまずさが故に吐いてしまった。

「な、なんですと!?指揮官には男の味がわからないのか!?」

「何が男だっ!!そんなに私を殺したいのか!?喧嘩なら受けてたつぞ!!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

ジルチは私に追いかけられて基地の中を走り回っていた。

基地の中で誰かの着歌が流れる。

私はジルチを追いかけながらその聞いたことのある歌を懐かしいと思っていた。

その歌は彩葉が歌う「L'amour et la liberte」だった。

戦争についてを唄う悲しい歌。

戦争を目前にして基地内部はバカ騒ぎとなっていた。





続く!!