第一章
『ミネルヴァ』
2050年
地球は温暖化が進み北極の氷は全て溶けてしまっていた。
その氷は海水を増量させたためにほとんどの島国を海へと沈ませてしまう。
世界地図の中からイタリアはその姿を消していた。
他の国も壊滅寸前。
インドネシアの領土なんかほとんどが水の下。
それは日本も同じだった。
海に面していた場所はほとんどが沈んだ。
さらにこの温暖化のため島根県は砂漠と化してしまっていた。
夏の最高気温は50℃を超えてしまうときもある。
今まではなかった病原菌の発生。
死に絶えていく人々。
これが人類の祖先が取ってきた行動への罰。
テクノロジー発展に対しての代価は高いものとなってしまった。
旧約聖書ではこう書いてある。
『神は人々を洗い流そうと地上に大洪水を起こした。しかしノアの箱舟があったため数人が生き残る。』
その箱舟になろうと立ち上がったのが私の父率いる「ミネルヴァ」だった。
現在の日本には政権も総理大臣も天皇もいない。
東京は高温、沈没、火山の噴火、病の発生で壊滅。
現在、首都は京都となっている。
なんとか人類を救いたいと立ち上がったのが父とその仲間。
それがミネルヴァだった。
日本では彼らに全てを託している。
実際のところ日本のリーダー組織のようなものだ。
父の計画はこうだ。
「国民のみなさん。ついにHOPESへと上がる準備ができました。この星の面積は地球の半分くらいしかありませんがちゃんと水もあります。ホープスは我々ミネルヴァが作り上げた人工的な惑星です。その名前の通り『人類に希望を』という意味があります。我々は先代達が繰り返した過ちをもう二度と起こすわけにはいきません。明日午前0時より我が日本の国民は全員がホープスの住民となります。」
そういえば自己紹介が遅れていた。
私は父の娘の茶倉。
彼の下でミネルヴァに所属している。
十七歳というまだまだ若い子供だが、今はこんな時代だ。
私のような子供だって遊んでいるわけにはいかない。
え?辛くないのか?
そんなことは決まっている。
父の大義を前に辛さなんてあるわけがない。
最近は趣味だったBeatmaniaができなくてちょっと寂しかったりするけれど。
まあ、そんなこんなで日本は他の国よりも先に人工惑星ホープスへと昇ったのだ。
アメリカ率いる国々は火星へ。
中国率いる国々は木星の地下へ。
そしていくつかの国が地球連合国として残ったのだった。
ここまでが10年前のお話。
またしても人間は戦争という形で過ちを犯してしまうことになるのであった。
「では、また戦争になるというのですか!?」
「ああ。このホープスの発展はアメリカ連合国にとっては気に入らないものなのらしい。」
私はその事実に驚いていた。
父が言うには火星にいる元アメリカ連合国が我々に降伏を唄っているらしい。
もし降伏しなければホープスを打ち落とす。
信じられない展開だった。
私が黙っていると、リヒトが突然会話に入ってきた。
「司令官。しかし、アメリカはかつて友軍だった。ただ気に入らないだけでそこまでしますかねぇ。」
「……副司令官。これが現状だ。副指令は例の噂が本当だとでも?」
例の噂というものを私は知らない。
私はつい聞きかえてしてしまっていた。
「例の噂って何ですか?」
父とリヒトは目を合わせて数秒考えていたがもはや隠せまいと覚悟したのだろう。
父は覚悟を決めたかのように眼鏡をかけなおした。
「元々地底に住んでいた火星人が憑依した。」
「・・・・・・・・・は?」
私は馬鹿にされたのかと思いつい苛立ってしまっていた。
リヒトが私の表情をみて私に言う。
「指令が仰ったことは本当だ。我々の先代でさえも気が付けなかった文明。火星にも文明があったんだ。そこに地球人が侵略した。」
信じられなかった。
そんなことがあってもいいわけがない。
いや、認めたくなかった。
「茶倉。認めたくなくてもおそらく事実だ。火星ではわけのわからない戦闘が相次いでいる。」
「・・・・・・・・・。」
私は言葉を呑むしかなかった。
それが事実なのだとしたら我々は異性人を相手にしないといけないという事になる。
それは敵がどのようなやつなのかも勝利の可能性もわからない相手だ。
人類の滅びを予兆させる事実だった。
「指令。例の兵器を動かすことになりますか?」
リヒトの言葉に父は眼鏡をかけなおして微笑する。
「ああ。もし我々のホープスを打ち落とそうとするのであれば『ラディウス』を起動させる。元々ミネルヴァはいかなる事態をも予想してあの兵器を作らせたのだ。使わない手はないだろう?」
「ラディウス?」
私には知らないことばかりだった。
そんな私の顔をみてリヒトは壁にあるスイッチを押した。
その時であった。
00と書かれていたシャッターがゆっくりと開かれる。
「!?」
シャッターが開く間にリヒトが簡潔に説明を始める。
「我らが戦闘用ロボット兵器。通称ラディウス。このパイロットは君だ。」